2013年03月号 ブログはiPadで
マックからiPadへ
ここ一ヶ月でブログの書き方が大きく変わった。04年に始めたブログ「shiology(シオロジー)」は原則として1日1記事。現在約3000回分を公開している。
9年間にわたって、ブログの執筆からアップロードまですべてをマックで行ってきた。しかし昨年12月以降、そのプロセスの多くにiPad miniを使うようになったのだ。
たとえマックで原稿を書いても、写真の張り込みやブログサーバーへのアップロードはiPad miniで行う方が効率がいい。マックを使って25年。こんな日が来るとは思っていなかった。
現在のワークフローを順に説明しよう。まずマックの純正アプリ「メモ」に新しい紙を開き、記事を書き始める。昔も今も、長文を高速で書けるのはマックだ。特に、タイピングに親指シフト(NICOLA配列)を採用してからは、その速度が倍加した。しゃべるように書けるダイレクト感が好きだ。キーボードに「HHKB Professional JP」を使うと、さらに正確性が向上し、入力効率も上がる。
原稿は一気に書き上げることもあるが、多くの場合は思いついたことを少しずつ書き進める。その際、「メモ」はiCloudを介してマック/iPhone/iPadの間で常に内容が同期されるため、どの端末でも続きを書けるのがいい。
以前はEvernoteを使っていたが、「メモ」の方が同期頻度が高い。文字列を書くごとに逐次、クラウドに反映される。特にセルラーモデルのiPadやiPhoneなら常時ネットにつながっているので、この即時性が生きるのだ。
マックで原稿の文字部分をある程度書いたらiPad miniの「メモ」で全文をコピーし、「Drift Writer」にペーストする。また一気にiPad miniで書く場合は、最初からDrift Writerで書き始めることもある。
最近、Drift Writerに、「ATOK Pad for iOS」との連携機能が追加された。ワンタップでATOK Padに執筆環境を移行できるのだ。
未知との遭遇
iPadやiPad miniで長文を書くなら、ATOK Padが効率的だ。フリック入力をすればマックと遜色ない速度で書ける。指を使うときは、中指と人差し指の2本でフリック。より長く書くときは「Su-Pen」でフリック。キーパッドを好きな位置に置けるのも使い勝手がいい。
そのATOK Padで未確定文字列を漢字に変換するにはスペースキーを上向きにフリックする。実はこのアプリをリリース当初から2年以上使っていながら、最近までこのことに気づかなかった。キーパッド上部に並ぶ語句を「変換」候補だと思っていたが、実際は「予測変換」候補だったのだ。それゆえ「ATOK Padの変換性能はイマイチだ」と思い込んでいたが、正しく「変換」してみると実に賢く変換してくれる。誤解していて申し訳なかったとともに、これさえあればiPad miniだけで長文を作成することが十分にできるとの確信に至っている。
このことをブログに書いたら、やはり他にも「スペースキーの上フリックでかな漢字変換ができる」ことを知らなかったという人が何人もいた。この「変換」方法はマニュアルにもさらっとしか書かれていない。私も当初マニュアルを読んだ時には見逃していたようだ。2年もの間この賢さを無駄にしていたのはもったいなかった。
ついでに言うと、未確定文字列がない状態でスペースキーを上向きにフリックすると「全角スペース」を入力できる。これも長らく「半角スペース」しか入力できないと誤解していた。このように、他の常用アプリにもまだまだ気づいていない便利機能があることだろう。未知との遭遇は愉快だ。
さて、ATOK Padで文章を仕上げたら、またワンタップでDrift Writerに戻る。続いて写真の張り込みだ。画面左側にあるドロワーを開き、自分のFlickrページにアクセスする。張り込みたい写真を表示したら、右上の共有ボタンをタップ。
すると、その写真を張るのに必要なタグが自動的に挿入される。それだけでも感動的だが、さらに同じことをFlickrの「Lightbox」表示でも可能だ。
Lightbox表示だと、ピンチアウトとピンチインを使って写真の拡大縮小が自由自在。それに左右フリックで前後の写真を行き来できる。待ち時間ゼロで次々と写真を見て、使いたい一枚を選び、ワンタップでタグを挿入。簡便かつ高速に写真入りの記事を作成できる。複数の写真を連続的に張るとき、その軽快さは特筆ものだ。
実はこのlightbox表示からダイレクトにタグを挿入する機能は、Drift Writerのベータテスト中に私が作者に提案したものだ。作者の青木剛一さんはそれを一晩で実装してくださった。少し工夫が必要だったと聞いているが、それをこともなげに作り込んでしまう彼の創造性に心から敬意を表したい。
Flickrの写真と同様、ドロワーで表示しているWebページへのリンクやYouTubeの動画もワンタップで挿入可能。また、twitterアカウントを「@shiology」といった形式で記載しておけばにリンクに変換される。
Markdownに開眼
書いた後は、Drift Writerの最下部にある公開ボタンをタップ。すると予め設定しておいた自分のブログ作成用ページがSafariで開かれる。あとは、既にコピーされている記事の本文をペーストし、公開するだけ。至れり尽くせりのブログ執筆環境なのである。
Drift Writerを作り、進化させ続けてくださる彼のおかげで、マックより数段快適かつ高速に、iPadのみで写真入りブログを作成できる。本当にありがたい。また彼は私に、Markdownの利用を勧めてくださった。HTMLのタグを書かずに、平易なテキストでリッチな文章を書くための表記ルールだ。
たとえば段落の末尾に改行を2つ入れておけば、自動的にパラグラフになる。リストを作るときは、各行の頭にマイナス記号やプラス記号を入れておけばいい。数字とピリオドを行頭におけば、自動的に番号の振られたリストになる。強調したい単語やフレーズは「*」で囲めばいい。
これらは元々、英文の電子メールで一般的に用いられきた表記方法だ。だから記述が単純で覚えやすく使いやすい。つまりMarkdownとは、メールを書く感覚でブログを書ける表記ルールなのである。
iPad mini、Drift Writer、そしてATOK Pad。いまや私にとってブログ作成の三種の神器だ。そこにMarkdownを使うと、すべてが軽快で気持ちいい。ますますブログを書きたくなる、ステキな環境だ。